
ガラスの靴は、どうして「スリッパー」? 「シュー」ではいけない大切な理由
追伸 未来に「ガラスの靴」を手がけるとは当時、知るよしもなく・・
はじめて「Slipper」と「Shoe」との違いをしっかり意識したのは、「ガラスの靴」制作サービスを正式に発表した2003年よりもほんの少し前のこと。
世界に1つの「パンプス」をつくる会社のアドバイザーをしていたとき。かつての同僚であり友人のSが立ち上げたファッション革命を狙ったスタートアップ。Sが「Slipper」は「舞踏会の靴」と、教えてくれていたのでした。
言葉「スリッパー」は室内履きのペラペラの、しかも消耗品というイメージなのに?
多くの方が、どうして「ガラスの靴」は、
原題では「ガラス・スリッパー」なの? と、疑問に思われます。
収蔵本の1つ、1845年の本。表紙を開いて、最初にでてくるページを撮影。題名は 「CINDERELLA, or the little glass slipper」
答)ガラスの靴 Glass Slipperの「スリッパー」は、舞踏用の靴。「美しく滑って踊る」ための靴なのです。
シャルル・ペローの名付けた原題(フランス語)は「Cendrillon, ou La petite Pantoufle de Verre」
仏「Pantoufle」→英「Slipper」
英語 「Cinderella, or the little glass slipper」
日本語 「シンデレラ、または小さなガラスの靴」
・・ シンデレラのスリッパー「SLIPPER」とは?
「舞踏会用の靴」のこと。
晩餐会、夜会用の靴を、「Evening Slipper」と呼びます。
外履き用の「Shoe」とは区別します。(私たちが使う室内履きのスリッパーは「Carpet Slipper」)
日本人初のノーベル文学賞受賞、川端康成は、どう翻訳?
川端康成 シンデレラ姫昭和28年発行(収蔵本より)
はじめて登場するときは、「ガラスの上靴(うわぐつ)」と訳して、読者に、外履きの靴とは区別してもらえるように翻訳し、2回め以降は、わかりやすく「ガラスのくつ」に。
原作者ペローは、王宮に行き、舞踏会で踊ることから、「Slipper」を使いました。日本語では「舞踏用の靴」を示す用語がないため、「ガラスの靴」と訳したようです。
川端康成は、繊細に「あいまい」をうまく表現する彼は、ふさわしい日本語がないとはいえ「ガラスの靴」を大事に考えたのだと思います。逆に「あいまい」にしないで、外履きの靴とはきちんと区別しておこうと思案されたのでしょう、「Glass Slipper」を「ガラスの上靴」と訳されました。
では、舞踏会で踊るための靴のことを、
どうして「スリッパー」と呼ぶのでしょう?
Q) 「シュー」ではいけないの?
A)「Shoe」を履いて舞踏会に行かない理由には、大きく2つの事情があります。
1つめは、「Shoe」とは外履きの靴のこと、「Shoe」では靴底の「砂粒」が舞踏会の「床」を痛めてしまうのです。
2つめは、最も大事なこと、「Shoe」では「踊れない」のです。
語源は「slipor」。1000年位前に遡るようです。もちろん意味は「滑ること」。その「場所」からスリップして「移動できる」ことから来ているようです。
舞踏会で踊る靴「Slipper」。その最も大切な性質として、ちゃんと「滑ること」があげられます。踊るには「靴が床の上を滑る」ことが大事なのです。
シャルルペローが行事のために幾度も過ごしたであろう、舞踏会が開かれたベルサイユ宮殿の「鏡の回廊」は、贅を尽くし「寄せ木細工」により床が作られています。
この「寄せ木細工の床」を傷つけないために、そして、寄せ木細工のゆえに、わずかに凹凸のある床面でもスムーズに、男性のリードにあわせて”クルリ、クルリ、クルリ”と、まるでスケートリンクの氷上をなめらかに滑るかのように踊るために、
床の上を美しく”滑る”ための舞踏会用の靴「Slipper」が必要なのです。(滑らない靴 「Shoe」では床を傷つけるだけでなく、脚がもつれ転んでしまいます)

新登場 2022
コロナの雲空、なかなか晴れませんね。こんな時は、勇気をくれる魔法を。スマホ待受にして、かろやかに、今日を踊ってしまおう!

スマホ待受になる、仮想写真「ガラスの靴」はじめました。(2022年1月6日)
コーヒー1杯の価格で。319円
ミッション・ステートメント
ホッとしたい時にいれる1杯のコーヒーのように、欲しい時、1枚のガラスの靴の写真が、勇気を贈ってくれる、いつでも、どこでも・・ このサービスを開発したミッションです。価格は、スタバの定番メニューにならい、税抜き290円、税込み319円に設定しました。
ちなみに、シャルルペローが「シンデレラ、または小さなガラスの靴」を出版(1697)した頃の、ペローが仕えた王様、ルイ14世はこんな靴を履いていました(1701)
若い頃・・ ベルサイユ宮殿で行われた演劇で「太陽」に扮する、ルイ14世。踊る時には、こんなに飾りのついた靴を履いていたのでした。
現在でも、舞踏会デビューをしますと、その「Slipper」を一生大事に使っていくそうです。舞踏会用の靴は、「特別にあつらえるもの」であり、高価であり、舞踏会デビューに備える家族の想い出の靴なのです。こうして準備する「Slipper」への想いは、今の時代の舞踏会デビューにも受け継がれ、一生大事に使います。
「Slipper」には、一生大切にする靴という、家族のあたたかい想いもあったのです。
いかがでしょう・・ シンデレラの「ガラスの靴」にぴったりの言葉が「Glass Slipper」なのです。