あんがい長いシンデレラ原作。200年前の本を底本に、要約でない、日本語訳(完訳予定 10月31日)

本「シンデレラ、または小さなガラスの靴」(出版年1845)の内表紙

「The Home Treasury CINDERELLA OR THE LITTLE GLASS SLIPPER」

翻訳の底本にするのは、200年近く前のこの収蔵本「シンデレラ」
(シャルル・ペロー原作)

出版人 Joseph Cundall 

発行社 Charles Whittingham, Chiswick Press 

発行日 1845年

出版国 イギリス

底本は、出版人 Joseph Cundall氏の子供向けの出版「家族の宝物シリーズ」として出版された「シンデレラ それは小さなガラスの靴」。


美しいイラストレーションは、当時の優れたアーティストに依頼したもの。いまもイギリスでは、出版史上、美しくデザインされた子供向けの本の一つとして、高い評価をうけております。(この本の挿絵のカラーは、ハンド・ペインティング。)

シンデレラ それは小さなガラスの靴

いく世代も前のことですが、ある裕福な男と妻は、愛らしい小さな娘の親となりました。この子がまだ9歳の時です。母は病に倒れてしまいました。自分の死がせまっていると知って、母はまだ小さな娘を呼んで、こう言い聞かせました。「私のかわいい子、いつも良い子でいなさい。我慢するの、どんなことがあなたに起きても、根気をもつの、どんなに悪い人や困ったことにあって、苦しむことがあっても、必ずあなたは幸せになるの、そう、最後には必ず、そう心がけていれば。」 それからまもなく哀しいことに母は亡くなり、娘は大きくて深い悲しみに包まれてしまいました。いつも良くしてくれた優しい母をなくして。

さてさて、この先にすすむ前に、なぜあらためて、翻訳?

たとえば、70年前の翻訳「シンデレラ」(シャルル・ペロー原作 楠山正雄訳)は、こんな始まりの物語です。

むかしむかし、あるところに、なに不自由なく、くらしている紳士がありました。ところが、その二どめにもらったおくさんというのは、それはそれは、ふたりとない、こうまんでわがままな、いばりやでした。まえのご主人とのなかに、ふたりもこどもがあって、つれ子をしておよめに来たのですが、そのむすめたちというのが、やはり、なにから、なにまでおかあさんにそっくりな、いけないわがままむすめでした。

青空文庫に公開の「シンデレラ」より https://www.aozora.gr.jp/cards/001134/files/43120_21537.html

どうやら、320年も前のシャルル・ペローの原作は、世界の各地で愛されてやまず、出版や翻訳の都度、その時代に応じて、少しずつ翻案された部分もあるようです。そこで、私たちは、およそ200年前の蔵書を底本に、翻訳してみることにしました。


大人になってから、あんがいと長い、この原作を読まれたこと、いつだったことか。有名な映画をネット動画サービスで、いつでも見られる今、原作を手にする日は、ますます遠ざかります。そこで、いつでも読めるように、古い本を底本に、完訳をつくるしだいです。どうぞ、お楽しみください。

父はひどく憂い、別の女性と結婚することでこの悲しみを乗り越えようと、娘の母となり、彼の伴侶となってくれる、聡明で倹約家の女性を探そうとしました。候補選びは、ある未亡人に落ち着いたのですが、この女性は、高慢で、自分のしたいとおりにしないと気がすまない性分であり、先の結婚で二人の娘がいましたが、ふたりとも母親に似て、ごうまんで、意地が悪いのです。

 

この女は、ずるがしこさに長けており、自分の悪い素性をうまく隠していたので、とても愛想の良いひとにみえたのです。やがてこの女は本当の性格をさらけ出すようになり、すぐに結婚は終わりをむかえようとします。この女は夫を軽くあしらい、使用人とは喧嘩をし、彼のかわいい母のいない少女には非常に厳しく当たったのです。娘を心から愛していた父は、妻の冷酷なふる舞いをいさめましたが、これは増す増すこの女を悪くさせてしまうばかりとなり、ついに父は心を病んでしまって、まもなく、早すぎる死をむかえてしまったのです。

父親が亡くなるとすぐ、幼いのに一人ぼっちとなった娘は、しだいに耐えないといけない苦労がどんどんと大きく増していることに気付きました。彼女が何をしようと、どこに行こうと、部屋の中にいようと外にいようと、継母や娘たちの前にいる時はいつでも、彼女は必ず叱られることになりました。日の昇る前から、台所のきつくて意地悪な仕事、火をおこしたり、使用人が鍋を洗うのを手伝ったり、食器を洗ったりする仕事を言いつけられ、また継母と姉妹が住む、優雅な調度品で整えられた部屋の掃除を言いつけられました。夜になると、絹のカーテンで囲われた大きくて美しい部屋では姉妹が柔らかいソファに横たわっているというのに、このかわいそうな少女は、カーテンのない屋根裏部屋の、藁のベッドで眠むることをしいられ、屋根裏の薄い壁をとおり抜けてくる、冷たいすきま風から身体を守るのに十分な服さえ持っていませんでした・・・

ひどくしいたげられているにもかかわらず、この優しい心根の少女は、不平を言わず、しうちの全部をなんとかやり過ごしていました。たった1つ、家の中に暖かい場所があり、少女がいじわるから自由になれたこの場所は、台所の炉の隅のすこしだけ空いた所にあり、仕事が終わると、消し炭(シンダー)のすき間に座るので、家族は彼女を灰かぶりの少女(シンダーウェンチ)と呼ぶようになりました。ところが姉妹のうちの妹は、この名前では、普通すぎると思えて、シンデレラという名前をつけ、より良い響きになったからと、この名前でずっと呼びつづけたのでした。

こんなにものあらゆる苦難にもかかわらず、辛抱強く耐え、シンデレラは日に日に美しく成長し、だれからも愛されるようになりました。もちろん継母と姉妹、彼女たち以外のですが。その一方で、彼女たちは、その不愉快な気性と冷酷なさまのために嫌われており、彼女たちの醜い行いは、めだっていきました。

  

ちょうどその頃のこと、この国の王が二日間にわたる饗宴を開き、そこに来た人々の中から、王子が花嫁を選ぶことになりました。王国のすべての貴族やお歴々が招待され、そのなかには、もちろん、シンデレラの二人の姉妹も招待されました。でも、可哀想なシンデレラは、お城の誰も、彼女のことを何一つ知っていないために、招待されなかったのです。

横柄なこの2つの創造物は、王子の舞踏会にいる場面に思いをめぐらし、満面の笑みをうかべ、盛大な日のために ドレスの準備を始めました。

二人は、シンデレラを何回も呼びつけて、 「私たちの髪をとかして、洗って、おさげに編んで、それから私たちの美しい服の全部に、アイロンをかけておいて」と言いつけました。彼女らは一切なにもせず、ただ舞踏会のことと、どんなドレスを来ていこうかとばかり話していました。

「私は」、姉は「緋色のベルベットのドレスを着て、フランスのレースをつけます。」と言います。妹は「緑のベルベットのドレスを着て、金のモスリンのすそを。髪にはダイヤモンドを。きっと魔法をかけたように見えるでしょう。」と言います。

この二人の若い女性たちは、鏡をみつめることと、舞踏会の話題にとりわけ夢中になり、スレンダーな体形になろうと、2日間はほとんど何も食べず、コルセットをしめる紐は1ダースよりももっと壊していました。


舞踏会のこの朝には、宮廷の美容師が呼ばれ、街のほとんどすべてのおしゃれな店から、最も新しくて工夫を凝らした装飾品を探し出し、手に入れておきました。それでも街には、シンデレラほど着こなしのセンスの良い人はいなかったので、姉妹たちは、良心のとがめもなく、シンデレラの手を借りました。

シンデレラは、もちあわせた無上の優しさと温かな人柄から、これまでのひどい扱いをすべて忘れて、姉妹たちをできるだけ美しく見せるために、できうる最善を尽くしました。にもかかわらず、このような良き行いの最中に、恩知らずな創造物たちは、シンデレラをあざけることを止められず、舞踏会に行きたいかどうかを尋ねました。「ああ!」、シンデレラは言いました。「あなたがたは、私を物笑いのタネにしようとするのね、私は服を持っていない。」 「そのとおりよ。」と彼女たちは言った。「みんな笑うでしょうね、ほんとに、あなたのようなシンダーウェンチ(灰かぶりの娘)が、舞踏会にいるのを見たら!」

待ちに待ったその時がやってきて、自信満々のお嬢様たちは馬車に乗り込み、宮殿へとかけて行きました。


シンデレラは馬車が見えなくなるまで目で追い、泣きながら台所に戻ると、そこで初めて、この手ひどい、無慈悲な、わがみの落ちぶれた境遇をなげき悲しんだ。台所の炉の隅ですすり泣きつづけていていると、キッチンのドアをトントンと叩く音がして、われに返り、立ち上がり、なんだろうと見に行きました。シンデレラは、松葉杖でよろよろと歩く小さな年老いた乞食の女性を見つけた。老女はなにか食べ物をくれないかと懇願した。「私の夕飯の残りしかないわ、美味しいお菓子、でもそれは乾いたパンの耳くらいのものだけど。でもどうぞ、おあがりになって、体を温めていくくらいのことしかできないけど、どうぞ。」 「ありがとう、お嬢さん。」と老女は弱々しいかすれた声で言った。老女は部屋にあがり、火のそばの椅子にこしかけた。 

「おやおや? やれやれだね! いったい大粒の涙はどうしたんだい、お嬢さん。」と老女は言いました。シンデレラは老女に自分の悲しみをすべて話しました。姉妹が舞踏会にでかけて行ってしまったこと、どんなに自分も行きたいと思っていたか、でも服も、まして乗り物もないことを。


「でも、さあ、行きましょう、かわいいお嬢さん。」と老女は言いました。「私は妖精の国の女王ではないけど、あなたのゴッドマザーなのだよ。」 「涙をぬぐいなさい、良き神の娘(教女 God-daughter)のように、あとは、私の言うとおりにすれば、誰よりも立派な服と馬を手に入れられるのです。」 

シンデレラは、父がくりかえし彼女にゴッドマザーの話をしていたのを覚えていて、私のゴッドマザーは子供たちを守る良い妖精の一人だと教えてくれていたのです。シンデレラは元気を取りもどし、涙をぐっとぬぐいました。


妖精は、シンデレラをしっかりとつかみ、「さあ、お嬢さん、花園に行って、かぼちゃをとってきなさい。」と言いました。シンデレラは、妖精の命をさっそく叶えるためにさっそうと駆け出し、すぐに戻ってきました。彼女がみつけたなかで一番美しくて一番大きい、かぼちゃ1つを持って。ビール樽ほどの大きさで、ゴロゴロと転がし、いったいゴッドマザーはこのかぼちゃでどうするのだろうと思いながら、台所に運びいれました。ゴッドマザーはかぼちゃを手にとると、中の身をどんどんすくい取り、からっぽにし、固い皮だけを残すと、杖で叩きました。すると、一瞬にして、これまでに見たことのないほどエレガントな、金箔をほどこした馬車になりました。

老女は次に、シンデレラに食料庫に入り、ネズミ捕りをみつけて、6匹の小さなネズミを、生きたまま連れてくるように言いつけました。ネズミ捕りのなかに、見つかるはずだからと。シンデレラはせきたてられるように食料庫に行き、妖精の言ったとおりに小さなネズミを見つけ、老女にネズミをもってくると、老女は、シンデレラにネズミ捕りの扉を、とてもゆっくり少しだけ持ち上げて、ネズミが一度に一匹しか出てこないようにと言いました。

シンデレラはねずみ取りの扉を上げ、ネズミが一匹ずつ出てくると、老女は杖でネズミを触り、すると、水色のリボンで結ばれた、長いたてがみと、しっぽを持った、立派な、元気のよい黒い馬車馬に変身しました。 

「さて、私のかわいいお嬢さん」 妖精はつづけます。もう、馬車と、馬ができた。ひかえめに言っても、姉妹の馬よりもハンサムだ。でもまだ馬にまたがり馬を指揮する左馬騎手もいないし、馬車をあやつる御者もいない。そこで、すぐに馬小屋にいって、ネズミ捕りをもってきてくれないかね。

シンデレラは、もう喜びに満ちあふれ、もう一瞬も迷うことなく、すぐにネズミ捕りを持ってもどってきました。その中には立派な大きなネズミが2匹入っていました。この2匹も、杖で触ってみると、とたんに1匹は身なりの良い騎手に変身し、もう1匹は、華美な制服をまとった陽気な御者に変身していました。 

ゴッドマザーは、つづけて言いました。「シンデレラ、もう一度、花園にいきなさい。あなたの支度を完成させる前にね。そこに着いたら、右側を進んでいくと、壁の近くにまで行けば、水飲み場があるから、その後ろを見てごらん、そこに6匹のトカゲがいるから、すぐに私のところに持ってきなさい。」

シンデレラは老女の望むとおり、いそいで花園に行き、6匹のトカゲを見つけ、エプロンに入れて、妖精のところに連れていきました。もうひと振り、あのステキな杖で触れると、あっという間に6人の身なりのととのった召使いに変身しました。魅力的な制服に身を包み、作法にのっとった、白い粉をふりかけた、白髪のかつらをつけた、伝統のおさげ髪に、前後のつばを上に曲げた三角帽、そして、頭に金の飾りをつけた立派な杖という、いでたちです。みんなすぐに、馬車の後ろに飛び乗りました、軽がると、それはまるで、生まれついてからこのかた、ずっと召使いとして、仕えてきたかのようでした。 

御者と左馬騎手も同じように位置についたので、妖精はシンデレラに言いました。「さあこれでよし、私の愛するお嬢さん、立派な装備もととのい、舞踏会に行きたくなったのではありませんか? みんな気に入ったかい?」

「ええ、ゴッドマザーさん」シンデレラはこたえます。おおいに遠慮しながらも、こう付け加えました。「でも、どうやって、私は、そこにいられるかしら、素敵なドレスを着た人たちでいっぱいあふれている中で、この粗末な服を着たまま?」

「それはもう心配しなくていいのよ、お嬢さん、今回やらなきゃいけないことのなかで、いちばん手間のかかる仕事はもう完成したのだから、あとはそうそう、あなたのドレスを、馬車や召使にあわせて、ぴったりなものにしあげないと、大変なことになるわね。」

そう言いながら、老女は、シンデレラを魔法の杖で触れると、彼女の服は一瞬にして、もっとも高価な宝石で装飾された、もっとも格調高い舞踏会のドレスに変わりました。老女はポケットからペアの美しいガラスの靴を取り出し、シンデレラに履かせると、さあと、馬車に乗り込むよう、てきぱきと、せかします。舞踏会はすでに始まっているのですから。


二人の召使いが馬車のドアを開け、美しいドレスを着たシンデレラを馬車に乗せてくれました。ゴッドマザーは、シンデレラが出発する前に、厳しく命じました。たとえどんな理由があっても、時計の鐘が12時を打った後に、舞踏会にとどまれば、たとえ12時を過ぎて、一瞬でも、そこにとどまれば、立派な馬車、馬、御者、左馬騎手、召使い、立派な衣装は、カボチャ、小さなネズミたち、大きなネズミたち、トカゲたち、そして、粗末な服の元の姿に戻ってしまうと付け加えた。

シンデレラは、妖精の教えてくれたことを、すみからすみまで、誓って守ると約束し、とびっきりの大喜びで、召使いに、行き先を告げると、召使いは、大声で、命じるような声の調子で、御者に叫びました、「めざすは、王宮だ。」


脚を高く上げる馬に、御者が優しく鞭でふれると、馬車はさっそうと出発し、ほどなくして、王宮に到着しました。


(ここまでで、全体の27%です。つづく 翻訳の完成予定日 10月31日)

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